意識高い系()エンジニアの痛いブログ

Webエンジニアがまったりと考えたこととか書いてます。

子どもが苦手な人の話

こんな話はどうでしょうか。

はじまり

僕の人生はそれほど不幸ではなかったし、これからもそれほど不幸でない人生が続いていくのだと思う。妹とも仲が良い。身長が160cmから伸びなくなったことは多少なりとも不幸だったとは思うが。

僕が近所の子ども会に参加したのは何というか、ただのきまぐれだった。本来なら絶対にそんなことはしないはずなのに。

僕は、子どもが苦手だ。いつからかはよく分からないが、とにかく苦手だった。子どもの行動や言葉がなんだかうるさいのだ。もちろん、全ての子どもが、というわけではない。ファミリーレストランで大声で話す、電車の中で泣く、集団下校で歩道を占領して遊びながら帰る、そういう些細とも言える言動が苦手なのだった。

とにかく僕は今日、子ども会のイベントに参加していた。毎年恒例の餅つきだそうだ。僕も餅をついた。

どうやら近所のお爺さんの持っている臼と杵らしい。誰かがそんなことを言ったのが耳に入った。

子ども達は、出来上がった餅を食べている。こしあん、きなこ、のり、醤油。最初は大人達がやっているとはいえ、自分のついた餅は、よっぽどおいしいのだろう。いい笑顔だ。

ふいに、意識が宙に浮いたような気がした。幽体離脱みたいだった。経験したことはなかったが、とにかく幽体離脱したらこんな感じなのだろうと思う。

僕は、餅つきの様子を見ていた。幸せそうに笑う子ども、それを見てまた幸せそうに笑う大人。全体が幸せな雰囲気に満たされているような、そんな感覚。僕は、自分の居場所はここにはなく、疎外されているように感じた。

僕は小さい頃、こんな風に地域の子ども達と関わることがあっただろうか。あったなら、こんな風に笑えていたのだろうか。分からない。ただ、この子ども達はこれからも幸せに、この餅つきの文化を自分の子ども達にも伝えていくのだろうと思った。自分とは違って。

不意に僕は悟った。悟ってしまった。僕はこの小さな子ども達が苦手だったのではない。ただ羨ましかったのだ。幸せそうに笑っている子ども達が。

過去

僕にも小さい頃の幸せな記憶はある。昔住んでいた家の近所で、父親とキャッチボールしたこと、休みの度に祖父の家に泊まっていたこと。他にもたぶんいろいろ。思い出そうとすれば思い出せるはずだ。10歳までだが。

10歳の夏、父親は家に帰ってこなくなり、両親は離婚した。今にして思えば、普段から2人の会話は少なかったように思う。それほど仲が良くなかったのかもしれない。

今でも、当時の記憶としてはっきり残っている部分がある。母親の言葉。

「あんたはゲームだけできればそれでいいんでしょ?」

僕は、たぶん、何も答えなかったと思う。ただ、コントローラーを動かし続けた。画面は見えていたが、認識はしていなかった。10歳の少年には、その言葉を受け止めることはできなかった。父親が急に帰って来なくなったことに対して、何も思わない子どもはいないだろう。母は、そんなこともわからなくなるほど、精神的に余裕がなかったのかもしれない。何も言わなくて良かったと、今でも心底思っている。何か言えば、母はダメになっていたかもしれない。

これは別の日の祖母の言葉。

「あんたからもお父さんになんか言ってあげなさい」

「言えるものならとっくに言ってる」

僕は間髪入れずに答えていた。相も変わらずゲームのコントローラーを動かし続けて、相も変わらず画面を認識していなかった。直前までは、きちんと認識していたはずなのに。

僕は今でも、当時10歳だった自分があんなことを言えたのか不思議でしかたない。無意識のうちの諦めだったのか、あるいは無関心か。そう答えたことだけは覚えているのに、その時に何を思っていたのかは、何も覚えていない。

これは予想、いや願望に近いものだが、祖母の言葉で何か行動を起こしていたなら、未来は変わっていたと思う。自分と、(当時7歳だった)妹のためにも、一緒にいて欲しいと、願い、口にしていたなら、もしかしたら離婚を一時的には踏みとどまったかもしれない。せめて子ども達が大人になるまでは、と。

過去は変わらないし、変えられない。絶対に。あの年から僕の一部は10歳のまま止まってしまった。僕の中に、確かに10歳のままの自分がいる。いくら姿形が成長し、精神的にも成長しても、どこか根本的なところで、やはり僕は10歳の、子どもだった。

現在

「よいしょー!」

僕は餅つきの掛け声とともに現実に戻った。やっぱり僕は子ども達が羨ましかった。両親がいて、一緒に餅つきをして、一緒に食べる。ただそれだけのことが、あの時の自分にはできなかった。幸せな子ども達が羨ましく、このままその幸せを享受し続けて欲しいと思う。

僕の中には、まだ10歳の少年がいる。